ご相談前の状況
ご相談者様は、ご夫婦で暮らしておられましたが、病院で「余命3か月」と宣告を受け、人生の終わりに向き合う中で、ひとつの大きな心残りについてご相談されました。お子様はいらっしゃらず、ご自身に万が一のことがあれば、法律上の相続人は兄弟となる状況でした。しかし、その兄弟とは長年あまり親しい関係ではなく、何よりもご自身の死後に、奥様が兄弟と財産のことで交渉や話し合いを強いられるのはあまりに酷だとお考えでした。
「自分の財産はすべて妻に遺したい」——そんな強いお気持ちを、静かに、しかし確かな言葉で語ってくださいました。
ご相談後の対応
ご本人の病状から、いつ急変してもおかしくない状況であったため、時間との戦いでもありました。当事務所では、すぐに大阪府下すべての公証役場に連絡を取り、状況を丁寧に説明。最短で対応可能な公証人を探し出し、公正証書遺言を無事に作成することができました。内容は、ご本人のご意向どおり、すべての財産を奥様に相続させる旨を明記し、将来的なトラブルの芽を断つものとなりました。
当事務所からのコメント
このご依頼は、法律や制度の知識以上に、「時間」と「想い」に向き合う覚悟が求められるものでした。わずかな体力を振り絞りながら、懸命に言葉を選び、ご自身の最期の意思を伝えようとするご相談者様の姿勢は、今でも深く心に残っています。遺言とは、単なる財産分配の手続きではなく、大切な人への最終メッセージであり、生きた証そのものです。
ご本人が安心して旅立ち、ご遺族が迷うことなく次の一歩を踏み出せるように、私たちはこれからも、一つひとつのご相談に誠実に寄り添ってまいります。