ふたりの娘をもつ母の遺言

「家を守るための静かな決意――娘たちへの想いをかたちに」 

ご相談前の状況

ご依頼者様は、既にご主人を亡くされ、現在は長女様と同居されていました。長年、身の回りの世話をしてくれている長女様には感謝の気持ちがあり、「この家は長女に譲りたい」との思いをお持ちでした。本来であれば、自分が亡くなった後、姉妹で話し合って円満に相続してくれるだろうと信じたい気持ちがある一方で、実際には心配な点もありました。特に、相続人ではない二女様の配偶者が過剰に口を出してくるのではないか、という不安を感じておられました。「自分が亡くなったあと、子どもたちが財産のことで揉めることだけは避けたい」——その思いが、遺言書作成のご相談につながりました。

 

ご相談後の対応

ご本人のご意向を丁寧にうかがい、以下のような内容で公正証書遺言を作成いたしました。

 ご自宅の不動産については、長女様に相続させる旨を明記

 その他の財産については、内容や金額に応じて可能な限り公平に二人のお子様へ分ける方針で記載

 遺言書には、長年にわたり自分を支えてくれた長女様への感謝と、姉妹の絆を大切にしてほしいという気持ちを込めた付言事項を添えましたこれにより、ご本人の真意が明確に示された、温かくも確かな遺言書が完成しました。

 

 

当事務所からのコメント

「話し合えば分かってくれる」と願う一方で、「備えなければ誤解が生じるかもしれない」そうした葛藤に真摯に向き合われたご相談者様の姿勢が印象的でした。とりわけ親の財産を巡る話題は、たとえ家族であっても感情が絡み、想定外の意見や影響が持ち込まれることがあります。今回のように、「自分が元気なうちに、きちんと意志を明確にしておく」ことは、ご家族の将来の平穏を守るうえで非常に重要な一歩です。ご本人の想いが形となり、「これで安心しました」と微笑まれた瞬間、私たちも胸をなで下ろしました。

これからも当事務所は、人と人との想いをつなぐ遺言づくりを大切にしてまいります。